書評・読書録
知的独立を目指す全ての人にとって役立つ、あらゆる視点が詰め込まれた良書。元々は40年ほど前に出版された本であるため、デジタルツールが革命的に普及した現代では時代遅れになるかと思いきや、まったくそんな心配は不要で、今でもバリバリ現役で役立つ内…
シリコンバレー最重要思想家(シリコンバレー思想家なるジャンルがあるのを知らなかった)と言われるナヴァル・ラヴィカント氏が、SNSやブログ、メディア等を通じて発信した内容をまとめた本。 シリコンバレー云々というタイトルなので、「起業しろ」的なゴ…
とにかく自分の生活の生産性を上げるために、「これやっときゃOK」なことをまとめた本。効率よくパフォーマンスを上げ、人生を楽しんでいる人達の「共通言語」をわかりやすく可視化してくれている。 最近はライフハック的な本や情報に溢れているが、個別の要…
示唆に溢れ、強い知的刺激を与えてくれる、価値ある一冊である。片手に収まる文庫本である本書を通し、広く深い世界があることを教えてもらえる。こういった水準と厚みを誇る本を少しでも理解できるのは、読書をする者の醍醐味だ。 一方で、間違いなく難物で…
米国の日本企業研究者である著者が、日本の戦後の経済発展から、バブル崩壊後に苦悩しつつも少しずつ戦うフィールドを変えて競争力を高めてきた直近の変化に至るまで、経営学者として客観的に観察・記述し、「日本(企業)の良さ」にフォーカスを当ててイン…
2022年10月初版の柄谷行人氏による最新の著作。「交換様式」を軸に、マルクス、フロイト、ヘーゲル、カントといった哲学界の巨人の考えを参照しながら、縦横無尽に世界を読み解く内容で、知的好奇心を刺激される力作だ。 僕の理解では、本書を理解するために…
日本でもすっかり有名になったマイケル・サンデル教授による、能力主義(メリトクラシー)の実態と論点について切り込んだ本。 本書を読むと、驚きと発見がいっぱいだ。米国のメリトクラシーについて書かれた本だが、日本に住む僕らにもメリトクラシーという…
マッキンゼーのシニアパートナー3名による共著。優れたCEOを200名抽出し、そのうちの数十名に直接インタビューして、優れたCEOの取り組んでいる仕事は何か、そしてそれらの仕事にどんな考えを持って取り組んでいるのかを明らかにした本。 既にCEOとして日々…
「きちんと知りたい」に応える、というシンプルなテーマで書かれた現代フランス哲学に関する入門書。19世紀以降の120名ものフランス哲学者を紹介している。 この本が素晴らしいのは、「きちんと知りたい」がちゃんと徹底されていることだ。つまり、とてもわ…
東京大学教養学部が新入生に向けて編纂したブックガイド。 東京大学で教鞭をとる教授陣が各パートで新入生に読むべき本を紹介していくというコテコテのブックガイドであり、かなりハードルが高そうに見える。事実、有名どころから本格派まで、あらゆるジャン…
1988年に発売された絶版本。活字中毒養成ギブスというインパクト抜群なタイトルに惹かれて古本で入手。 副題にある通り、ジャンル別に識者がお勧め本を紹介するという、いわゆるブックガイド的な内容。レベルの違う本読みが、僕など聞いたこともないような本…
地政学の観点から国際関係の将来を見通す、ストラテジストとして世界的に著名なジョージ・フリードマンによる一般向けの著作。出版は2014年と、この手の本としてはかなり時間が経ってしまっているが、まだまだ価値を失わないのは流石は「影のCIA」である。 1…
タイトル通り、経済学の三大巨人にフォーカスを当てた本。経済学が、現実の経済から離れて過度な理論追求を進める風潮にあると強く批判した上で、各時代の経済的な課題に対し最適解を出そうとたスミス・マルクス・ケインズを振り返ることの重要性を著者は指…
将棋のトップ棋士である羽生善治さんが、これまでの棋士人生で磨き上げてきた直感力について書いた本。 羽生さんの書かれた本では、「決断力」や「大局観」も有名で版を重ねており、こちらも名著には違いないが、僕はこの「直感力」が最も面白いと思う。何故…
優れたストーリー創作の本質を描くアリストテレスの名著。「詩学」という名前から現代の僕らは「詩 (poetry)」のことを取り上げている本だと考えてしまうが、古代ギリシアでは創作全般を「ポイエーシス」と呼んでおり、本書は本来創作全般を扱うことを企図し…
「村上ファンド」の名で一世を風靡した村上世彰氏が自ら筆を執り、自身の投資哲学やこれまでの活動を記した本。 著者の村上世彰氏というと、2000年代前半あたりは特にメディアに取り上げられることが多く、(僕は当時何も知らないガキんちょではあったが)物…
インデックス投資の種本とも言うべき株式投資に関する不朽のベストセラー。序盤からテクニカル分析やファンダメンタル分析といった有力とされている手法を片っ端からぶった斬り、市場平均に勝てる投資家はほぼ存在しないことをデータを使って証明していった…
文庫で上下巻の計2冊。添付の画像は上巻。本屋で目にし、楠木健さんと富山和彦さんが推薦という帯に惹かれ、中身をパラパラ見たら結構面白そうだったので購入。 今はもう有名人となっているIT業界の起業家たちが、若いころにどんなビジネスから手を付け、紆…
実務でバリュエーションに関わったので、知識の欠損がないか簡単に振り返るために再読。初版は2001年と20年以上前だが、廃れるような内容ではないことに加え、読み手を腹落ちさせるために実務家の視点に徹して記述している本書は、今でもバリュエーション関…
少し前に本屋で話題の書として展開されていたので気になって購入。オス(男)とメス(女)という、何となく常識として受け入れてしまっている二元論を打ち壊してくれる本。 本書を読む前は、オスとメスという生物的な区別は明確なものだと無意識に考えてしま…
言わずと知れた名著。20代前半に読んだ記憶があるが、当時は仕事経験が少なかったこともありあまりピンと来ず、今読み返したらもっと学びが得られるだろうと考え購入。 この本に対して、「基礎的なフレームワークしか使われておらず、今のビジネスの現場では…
原始仏典(中村元著、ちくま学芸文庫)※筑摩書房HPより引用 仏教思想・インド哲学の大家である中村元氏が、原始仏教の経典を取り上げ、その要点を平易に解説している本。仏教の経典を自分で一から読み下していくことに高いハードルがある僕のようなアマチュ…
「ローマ人の物語」の著者である塩野七生さんが古代ギリシアの歴史を物語としてまとめた本。当時の人物や出来事が生き生きと描かれており、まるでついこの間起きたことだったかのように感じられる。古代ギリシア人の話は地理的にも時代的にも遥か遠くの出来…
本書をひと言で表すなら、神保町マニアによる神保町マニアのための本だ。おそらく一度も神保町を訪れたことのない人は、この本をなかなか楽しめないだろう。こんな小さな街の歴史が詳細に書いてある本の何が楽しいのかと。しかし神保町に幾度か訪れたことの…
哲学者の千葉雅也氏が書いた勉強論。勉強の方法論にも言及している点では実学書のようにも見えるが、一方で「勉強」という、僕たちが普段は普通に受け入れている言葉を深く掘り下げ、その働き・意味を取り出しているという点では、この本の真の姿は「哲学書…
インデックス投資家の水瀬ケンイチさんが書いた、インデックス投資の王道を説いた本。インデックス投資の特性や具体的な取り組み方について、とても平易に記載されている。 僕自身は前からインデックス投資を継続しているので、正直言うとこの本を読んで何か…
古典と言われる書物がどのように成立するのかを、文献学の観点ではなく本を受容する読者の観点から説明している本。1つ1つの章が短いエッセイのようだが、本全体としてはつながりを持っており、読み進めていくと「古典」という言葉の周りを包んでいる皮を一…
本書のテーマは「人間は猫により良い生き方を学ぼう」というものだ。猫の生態や特徴について語っていたり、猫の魅力をこれでもかと表現しているコンテンツは世に多くある。一方で、「猫がどういう人生観(猫生観?)を持っていて、それが人間の持つ人生観と…
書店で見かけ、インパクトの強いタイトルに強い興味を呼び起こされ購入。南北戦争以前のアメリカ南部では主にアフリカから「輸入」された奴隷を主要な労働力とした、綿花や砂糖等のプランテーション経営がなされていたが、その経営は北部の自由労働者を主体…
ヘッジファンドBridgewater Associatesの創業者であるRay Dalioの著書。英文で500ページ以上ある大著だ。 ヘッジファンドの帝王という異名を持つDalio氏だが、僕らが「ヘッジファンド」という言葉を聞いて思い浮かべるものとは全く異質な考え方をベースとし…