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学びの集積

0030冊:古典論(外山滋比古著、みすず書房)

古典と言われる書物がどのように成立するのかを、文献学の観点ではなく本を受容する読者の観点から説明している本。1つ1つの章が短いエッセイのようだが、本全体としてはつながりを持っており、読み進めていくと「古典」という言葉の周りを包んでいる皮を一…

0029冊:猫に学ぶ いかに良く生きるか(ジョン・グレイ著、みすず書房)

本書のテーマは「人間は猫により良い生き方を学ぼう」というものだ。猫の生態や特徴について語っていたり、猫の魅力をこれでもかと表現しているコンテンツは世に多くある。一方で、「猫がどういう人生観(猫生観?)を持っていて、それが人間の持つ人生観と…

0028冊:奴隷会計(ケイトリン・ローゼンタール著、みすず書房)

書店で見かけ、インパクトの強いタイトルに強い興味を呼び起こされ購入。南北戦争以前のアメリカ南部では主にアフリカから「輸入」された奴隷を主要な労働力とした、綿花や砂糖等のプランテーション経営がなされていたが、その経営は北部の自由労働者を主体…

「武器を身に付ける」こと以上に、「武器の使い方を磨く」ことが重要だ(前編)

ビジネス書やビジネス系の記事を見ていると、ビジネスパーソンのキャリアについて、これからの時代に必要とされるスキルや、そういったスキルの習得方法といった、「武器を身に付ける」ことの重要性が語られていることが多い。言うまでもなく、一定レベル以…

0027冊:Principles For Dealing With The Changing World Order: Why Nations Succeed Or Fail(Ray Dalio著、Simon & Schuster Ltd)

ヘッジファンドBridgewater Associatesの創業者であるRay Dalioの著書。英文で500ページ以上ある大著だ。 ヘッジファンドの帝王という異名を持つDalio氏だが、僕らが「ヘッジファンド」という言葉を聞いて思い浮かべるものとは全く異質な考え方をベースとし…

0026冊 :一四一七年、その一冊がすべてを変えた(スティーブン・グリーンブラッド著、柏書房)

14世紀から15世紀に生きた人文主義者ポッジョ・ブラッチョリーニが、晩年にブックハンターとしてヨーロッパ各地を巡り、ルクレティウスの「物の本質について」という本を写本し広めたことを契機として、ヨーロッパに住む人々のパラダイムが変化し、科学的な…

0025冊:絶対悲観主義(楠木健著、講談社+α新書)

超ロングヒット作品である「ストーリーとしての競争戦略」で有名な一橋大学大学院の楠木健教授が、日立Webマガジン「Executive Foresight Online」に連載していた内容を、加筆・再構成のうえ新書として出版された本。ビジネス界においては知らぬ者はいないく…

0024冊:独学術(白取春彦著、ディスカヴァー携書)

「超訳ニーチェの言葉」など、哲学・宗教関連の啓蒙書で有名な白取春彦さんが独学について書いた本。独学の方法について語った本ではなく(一部そういったことも書いてあるが、本書の主題ではない)、独学とはどういうもので、どういった姿勢で独学に臨むべ…

0023冊:ゆかいな仏教(橋爪大三郎/大澤真幸著、知的生きかた文庫)

以前に大変話題となった「ふしぎなキリスト教」と同じコンビかつ同じ形式で、仏教について簡単な疑問から出発して掘り下げていく内容。大澤真幸さんが聞き手となり疑問をぶつけ、橋爪大三郎さんがそれに答えていきます。 読んでいて楽しい。それでいてしっか…

0022冊:カティリナ戦記/ユグルタ戦記(サルティウス著、京都大学学術出版会)

古代ローマにおいて政治家として活躍し、引退後に歴史家としてローマの歴史を記したサルティウスが著者であり、彼が書いた2つの戦記を1冊にまとめた本。「カティリナ戦記」はローマの国家転覆を試みたカティリナの陰謀を、「ユグルタ戦記」はヌミディア王位…

0021冊:戦略サファリ(ヘンリー・ミンツバーグ他著、東洋経済新報社)

経営戦略に関する様々な考え方を10のスクールに分類し、サファリツアーとして案内することで、読者に全体の見取り図を与える名著。 この本をcover to coverで読んでおけば、仕事で「戦略」という言葉を聞いても狼狽えることはなくなるだろう。その理由の1つ…

0020冊:モーセと一神教(ジークムント・フロイト著、光文社古典新訳文庫)

あのフロイト博士によるモーセに対する考察。分量が多くなく、論旨もクリアであるため取り組みやすい本。モーセがエジプト人であったという仮説を立て、ユダヤ教の歴史を振り返りながら1つの論考として紡ぎあげていっている。 本書の醍醐味は、フロイトの驚…

0019冊:センセイの書斎(内沢旬子著、河出文庫)

作家や翻訳家、研究者など、31の書斎に著者が訪問し、インタビューとイラストでその内実を描いている本。16冊目で紹介した「読書の腕前」から派生して手に取った。 31の書斎の中には図書館や本屋なども出てくるので、あくまで個人の書斎に限ったことではある…

0018冊:風姿花伝(世阿弥著、ちくま学芸文庫)

室町時代の猿楽師である世阿弥が書いた能楽論。500年以上前に書かれた本だが、本質を語っているが故に不思議と古さは感じない。 全体を通して語られているのは、世阿弥による演劇論なのだが、その中核にあるのは「花」という概念だ。能において、観る者をを…

0017冊:世界は宗教で動いている(橋爪大三郎著、光文社未来ライブラリー)

社会学者の橋爪大三郎がキリスト教、イスラム教、仏教といった世界の主要な宗教を取り上げて、それぞれがどのように世界を認識しているかという視点でエッセンスを解説している本。実際の講義をベースに作られているため、一問一答形式で書かれている。 専門…

0016冊:読書の腕前(岡崎武志著、光文社知恵の森文庫)

一言でいえば、読書好きが読書好きのために書いた本。読書が好きな方であれば必ず楽しめる、面白い本。僕も著者ほどの本読みではないが、とにかく読書という体験は好きなので、非常に楽しめる内容だった。一つ一つの文章から、本の楽しさや読書活動の素晴ら…

0015冊:センスは知識から始まる(水野学著、朝日新聞出版)

クリエイティブディレクターの著者が、「センス」という誰もが知っているが実はよくわからないものを説明し、その磨き方を語っている本。非常に平易に書かれており、本を読むのに慣れている人なら1時間もかからずに読めるが、内容が薄い本ではなく、むしろ難…

0014冊:うひ山ぶみ(本居宣長著、講談社学術文庫)

本居宣長が描いた古学の入門書。古事記をはじめとした古学への取り組み姿勢や方法論などを初学者に向けて解説している本だが、古学を志す人でなくても一読すると様々な示唆が得られる内容だ。 国学で名を残した超一流学者の指南本であるため、随所につい膝を…

0013冊:マネジャーの仕事(ヘンリー・ミンツバーグ著、白桃書房)

約50年前に書かれ、約30年前に邦訳された経営学の古典的名著。最新の学説が次々と発表され、分析手法が日進月歩する経営学という領域で、これほど古いテクストを読む意味がどれほどあるのかと穿った気持ちを半分持っていたが、一読してその気持ちは一変した…

0012冊:会社四季報ワイド版 2022年3集夏号(東洋経済新報社)

そういえばちゃんと読み込んだことがなかったなと思い購入。2千ページ以上あるデータブックを通読してみるという荒行。ちなみに僕はインデックス投資家なので、個別株投資にはあまり関心がなく、本書を読む理由は日本にはどんな企業があるのかを知っておきた…

0011冊:失敗の本質-日本軍の組織論的研究(中公文庫)

言わずと知れた名著。日本軍の本格的な研究でありながら、アカデミックな探求に閉じず、企業経営者のような実務家も唸らせるような実践的示唆を導出していることが、この本を名著たらしめているポイントだろう。ちなみに、執筆陣には日本を代表する経営学者…

0010冊:読書について(ショーペンハウエル著、岩波文庫)

再読。本書は20歳前後で初めて読み、そこから何回か読み直している。良い本というのは、読み手が持つ問題意識に応じて様々な読み方ができる。だからこそ、良い本は時代を超えて残っていくのだ。「読書について」は分量は多くなく、読み方によっては時間をか…

0009冊:限りある時間の使い方(オリバー・バークマン著、かんき出版)

あらゆる書店で平積みされており、NYTやWSJでも絶賛されているとの触れ込みが帯に書いてあり、テーマ的にも面白そうだったため購入。 タイトルには「限りある時間の使い方」と記載があるものの、本書を読めばわかるが、厳密には「時間の使い方」を論じた本で…

0008冊:良い戦略、悪い戦略(リチャード・P・ルメルト著、日本経済新聞出版)

超良書。ビジネスにおける戦略とは何かを知りたければ、本書を読むことを強くお勧めする。販売価格は2,000円+税だが、僕は本書が3倍の値段であっても躊躇なく買う。それくらい素晴らしい本だ。 但し本書は、「戦略の作り方パッケージ」を教えてはくれない。…

0007冊:方法序説(デカルト著、岩波文庫)

「我思う、故に我あり」というキーフレーズで有名な書。元々は大著だったが、現在「方法序説」として知られている文書はその序文とのことで意外と分量は少なく、また哲学書にありがちな形式ばった文体ではないため案外読みやすい。 内容はというと、唯一神を…

0006冊:禅の思想(鈴木大拙著、岩波文庫)

世界的に有名な仏教学者である鈴木大拙による禅についての著書。「禅思想」「禅行為」「禅問答」という3つの章立てで、禅の古典を引用しながら禅の本質に迫る本格的な内容。(いかにも岩波文庫に収められていそうな本書だが、意外にも第1刷発行は2021年3月…

0005冊:哲学思想史(淡野安太郎著、角川ソフィア文庫)

西洋哲学史上の重要人物の思想を紹介しながらも、「哲学的な考え方」も同時に伝えるという、2つのことを高次元で両立している良書。 一般的に上記の2つを両立させることは難しい。西洋哲学史を網羅的に記述し、紹介している本は多く存在する。しかし「歴史を…

0004冊:三島由紀夫紀行文集(佐藤英明編、岩波文庫)

この本を読んで驚くのは、三島由紀夫の感受性だ。言うまでもなく表現力も頭抜けているが、やはりその感受性に圧倒される。 三島が訪れているのは、北米、南米、欧州といった場所だ。こういった場所に訪れる経験は、執筆当時では珍しいものだったかもしれない…

スムーズにアウトプットが出ている状態は良い状態なのか

先日、タイトルの通り「スムーズにアウトプットが出ている状態は良い状態なのか」を考えていたのだが、そもそもなぜそんなことを考えていたかというと、普通はそれは「良い状態」のはずなのだが、僕自身はなんとなく「あまり良くない状態」だと感じていたか…

サボりながら結果を出すマインドの重要性

自戒を込めて書くが、生産性を高めるために重要な考え方は、「いかにサボりながら結果を出すか」ということだと思う。良くない表現かもしれないが、「いかにサボりながら」という部分が大切だ。 結果にコミットして逆算で考えることの重要性は以下の記事で言…