持たざる者は何をする?
僕のような持たざる者がビジネスパーソンとして戦っていくためには、何ができるのかをずっと考えてきたが、今持っている1つの仮説は「持たざる者が戦うためには、限られた経験や学習対象から如何に多くの学びを抽出できるか」が重要だ、ということだ。
僕が持たざる者と言っても、世界全体で見ればもちろん恵まれている。大学教育まで受ける機会を得られたし、仕事もあって、平和に、普通に暮らせている。
ただ僕が「持たざる」という時に言いたいのは、普通に高校→大学→社会人という経歴を歩み、留学経験もなければ、起業経験もなく、また尖ったキャリアを歩んできている訳でもない、ということだ。いわゆる華々しい経歴は皆無であり、普通に過ごしてしまえば、「〇〇の人」という際立った実績もない人になってしまう。
でもそれは嫌だし、どうしたら良いのか、という話。
人とは違う経験ができたら素晴らしいけど
そこでまず考えるのは、「他人とは違う、際立った経験をする」ということだ。これができると良いけれど、結論から言うと僕には「他人と明確に差別化ができるレベルで際立った経験を積む」ことはできていない。
なぜかというと、簡単に言えば「大してお金がなく、また人並み以上の行動力もなかった」からだ。少し説明すると、僕の想像ではキャリア的にプラスになる経験を積む方法には以下の2種類がある。
①エリートパターン(留学や大学院・MBAへの進学、有名企業でのインターン、学生起業経験など、すでにイケてると世間で思われている経験を積む)
*起業経験は一部②かも。まああくまでイメージなので
②独自パターン(小さい時から特異な領域に興味を持っていて突き詰めていた、誰もまだ???な状態の業界に単身飛び込んだなど、独自路線を突き進んでいたら後から世間が付いてきた)
このうち①は基本的にかなりお金がかかるし、②は結構な信念や行動力が求められると考えている。平凡な貧乏学生(ただし行動力は平均以下でも貧乏度合いは平均以上)だった僕にはこのどちらも難しく、また社会人になってもあまり変わらず、ということだ。
目指すはプチエリート?
お金を貯めて、上記①のパターンを目指す、ということも有力な方法なのだが、大学〜新卒社会人あたりで気づいたのは「上には上がいる」ということ。いくらエリートぶっていても、隣に有名高校卒→トップ大学→海外トップMBA→グローバル有名起業勤務といった、ドラクエ5のヘルバトラーみたいな人がいたら終わりである。
こういった人たちには、そもそもの地の能力や受けてきた教育のレベルが違うし、その後追いつこうと頑張っても課金ゲーム(塾、予備校、海外留学等)にそもそも僕が参加しても勝てない。
そういった人達とエンカウントしにくい領域でエリート感を全面に出し、プチエリートとして生きていくのも立派な戦略ではあるのだが、何だかひたすらエンカウントを避けるというのは目指す方向性とは違う。
やはりトップになれる領域を持つ必要があるのでは、と考えていた。
でも仕事は結局アウトプット
なんだか八方塞がりだなと感じてきたところで、今更1つのことに気づく。仕事はアウトプットが全てなのだ。ってことは、経験というインプットがショボくれていても、高いアウトプットにつなげられるようなテコが見つかれば、1つの光となるのでは?
つまり、アウトプットにつながるフローをものすごく乱暴に分解して考えてみると、
インプット(経験)×プロセス(経験から学びを引き出す)=アウトプット
となるとして、インプットでは勝負できなくても、プロセスの部分が優れていれば、高いアウトプットにつながるのでは、ということ。
身体をアナロジーとして使って考えれば、栄養(インプット)はショボくても、栄養を体組成への変換する効率(プロセス)が良ければ、良い身体(アウトプット)が形作られる、という考え方だ。
よくよく考えてみれば当たり前の話である。
ただ、通常僕たちは表に現れていることしか見えていない。つまり、インプットとアウトプットは見えやすいが、その間にあるプロセスはあまり良く見えないため、何がアウトプットにつながっているのかが、実はわかっていないことが多いのだ。
ここがキーになるのでは?と考えた。
プロセスを高めるために
そこで僕は、経験は後から付いてくるものと割り切り、下手に経験を追い求めるのではなく、プロセス部分を高めることに振り切って取り組んでみることにした。
具体的に何をするかというと、特別なことではない。ひたすら意識的に考え続け、学びを多く引き出すことを日常でやり続けるだけ。
読書をしては考え、仕事をしては考え、カフェに行っては考え、、、そしてノート(noteではなく紙のノート)にまとめたり、周りの人とディスカッションして更に考えを深めたりしている。
周りからみればただの道楽であるが、僕にとっては自分のキャリアを材料とした1つの実験である。
日々取り組んでいると、低空飛行ながらも色々とわかってくることがある。
例えば、実践に勝る学びの対象はないこと。読書するにしても、ビジネス書よりも、哲学書のような古典の方が学びを引き出す奥行きがあること。経歴は関係なく、優秀な人は高いプロセスの力を持っていること。などなど。
何か軸を持って取り組んでいると、凡人にも見えてくるものがあるものだ。
天井を引き上げることの重要性
プロセスを高める上で特に重要だと思ったことは、「高いプロセシング力を持っている人が、1つの経験や学習対象から如何に多くの学びを引き出すのか、その奥行きを知る」ということだ、
世の中には、同じものを見ていても、驚くほど多面的に、かつ深く、意味や学びを引き出す人がいる。持たざる者としては、「1つのものから、これほど多くのことを受け取れるのか」と気づくことで、プロセシング力を高める上での1つの羅針盤となる。
ちなみに、凄まじい経歴を持っている人が、高いプロセシング力を兼ね備えていて、全然到達できない高みにいることもあるのだが、そういう場合も落ち込む必要はないと気付かされた(実際にはちょっと落ち込むこともある)。
そういう人からは、経歴を真似するのではなく、プロセシグ力を学べば良いし、またプロセシングはかなり個性が出やすいので、高めていくと独自性につながっていくという良い効果もある(後述する)。
プロセス部分を鍛えると、徐々に効果が出てくる
プロセス部分を鍛えるというこの方法、即効性はあまりなく、簿記の知識やロジカルシンキングのようにすぐ明日から仕事に役に立つことにはならない。
どちらかというと、続けているとジワジワ効いてきて、いつの間にか視界が拓けている、といった感じだ。
プロセスを鍛えることの効用はいくつかあるが、例えば、周りと同じ水準の経験やインプットを得られる状況となったときに、周りよりも多くの学びを引き出すことができるようになる(=結果として高いパフォーマンスを発揮できる)、ということがある。
限られたインプットから多くの学びを引き出し、自分を高め続けていると、段々とアウトプットにつながり、今までは得られなかった経験や機会を得られるようになってくる。
そうすると、今まではインプット部分が劣位していたところ、周りと同じ水準に改善するので、プロセス部分が鍛えられている人の方が有利になる、ということだ。
また、少し前でも触れたが、プロセシングは独自性につながりやすい、ということも効用として挙げられる。
プロセシングとは、結局「自分なりの視点で対象を観察して学びを抽出する」ということなので、かなり主観的なものだ。唯一無二の正しい見方、といったものは存在しない。
つまり、プロセシング力を高めていくということは、独自の視座を持って、対象からより深く広く学びを得ていくことができるようになるということになることであり、その学びの集積が独自性を生み出していく、ということである。
まだまだ道半ば
つらつらと自分の仮説(という名の妄想)を書いているわけだが、「これを実践した結果、僕はスーパースターになれました!!」という、進研ゼミの付録マンガ並みの綺麗な締めくくりをできるレベルには全然至っておらず、説得力を出しきれないのが残念なところだ。
それでも、20歳やそこらの時に想像していたよりも、遥かに人生が好転しているとは思う。
かなりの貧乏学生だった僕だが、この10年やそこらで、少なくとも経済的に悩むことは大分減ったし、自分でも思いがけないような仕事をする機会を頂戴したり、また転職前後の職場でも面白く働けたりしている。
もちろん運や周りの方々の優しさも多分にあるのだが、自分がやってきた「プロセス部分を鍛える」ということがジワジワと効いてきたのではと思ってもいるし、また実感として、プロセシング力がどんどん仕事と人生に活きるシーンが増えてきている、とも感じている。
まだまだ道半ばではあるが、今後もこのキャリア的実験を続けていって、どれくらいの効果と実績を享受できるか、検証してみようと考えている。
そして、同じような境遇や課題意識を持っている人が、少しでもこの話からポジティブなものを受け取ってもらえたならこれ以上のことはない。