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学びの集積

生存戦略としての思考力入門

20代から一貫してビジネスパーソンとしての生存戦略を考えてきたが、やはり思考力が最も重要だというのが僕の結論だ。

もちろん、ファイナンスの知識を身に付けたり、IT/デジタルの経験・知見を持っていたりすることも重要である。

しかし、何が最も重要かと聞かれたら、その答えはやはり思考力であり、思考力こそが何よりも優先して高めていく必要があるものである、と僕は言いたい。

 

今回は、ビジネスパーソンとしての生存戦略において思考力が最も重要であるという僕の仮説を、

 

①思考力とは何か

②なぜ思考力が最も重要なのか

③思考力を高めるためには何をすべきか

 

という3つの観点から簡単に説明したい。

①思考力とは何か

思考力という言葉は、非常に曖昧かつ多義的に使われており、文脈によって意味するところが大きく異なるが、ビジネスパーソンのサバイバルという観点から考えた時に、僕は以下3つの要素を総合したものを思考力と呼んでいる。

 

A)認識力:自分の周囲にある環境や、直面している状況を正確に把握・認識できる

B)解釈力:環境や状況を把握した上で、それを自分なりに解釈したり、意味を抽出したりできる

C)対応考案力:解釈や意味を踏まえて、自分がどのような対応を取るべきかを考え、意思決定できる

 

この3つの力の内、「どれか」ではなく「どれも」高いことが、高い思考力を持っていると言える状態である。

②なぜ思考力が最も重要なのか

僕の結論は、一言で表せば「長期的に結果を出し続けるために必要だから」ということになる。

①で定義した思考力とは、要は変化する環境を捉えて、自分なりに対応策を考え出していく総合的なチカラのことだ。

社会は、世の中は、常に変化し続ける。誰も予想しなかった確変が起きることもある。

変化が起き続ける中では、その瞬間に世の中に求められることを場当たり的に取り組んでいくのでは、長期的に結果を出し続け、生き抜いていくことには繋がりにくい。

「世の中で求められること」に依拠せず、常に自分の頭で考え抜いて対応していくことが長期的なサバイブに繋がるはず、というのが僕の考えだ。

 

「世の中に求められること」の例として、ビジネス界隈で周期的に出現するバズワードがある。今だとDXやSDGsというような言葉が流行りだ。NFTもそうかもしれない。

こういったバズワードは次から次へと出てくるのだが、そうすると思わず僕らは「こういうことをもっと知っておかなくちゃ」という心理が働き、真面目に学んでみたりする。

もっと真面目だと、わざわざオンライン講座や研修なんかに通って、何らかのスキルを身につけようとしたりする。

 

もちろん、こういったバズワードやそれに合わせた勉強が無意味とは言わない。流行ったり、求められたりするからには、何かしらの理由があるからだ。

ただ僕が言いたいのは、こういった行動は短期的には変化に合わせた対応になるかもしれないが、長期的なサバイブには繋がりにくいのではないか、ということだ。

中長期的にはまた新たな変化が次々と訪れるので、一時に求められたスキルが知識がずっと有効に機能するとは考えにくいからである。

 

一方で、高い思考力を持っていることは、変化が起きる中でサバイブしていく際の強力な武器となり得る。

次々と起きる変化を捉え、自分の置かれた文脈においてどんな意味があるのかを考えた上で、必要な対応を取ることは、どんな時代やトレンドにおいても必要となる、普遍的に求められる能力だからだ。

その瞬間に世の中で求められることに受動的に対応していくだけでなく、このように普遍的に求められる思考力を鍛えることが、遠回りに見えて実は生存線略上で最も効果的な方策だと僕は考えている。

③思考力を高めるためには何をすべきか

②で説明した思考力の重要性については、「そんなこと改めて言われなくてもわかってるよ」という方も多いかもしれない。

思考力が重要ではないと言う人は多分あまりいないだろうから(もっとも、僕は思考力が「最も」大事であり、「最優先」で鍛えるべき能力だと考えているので、その点に合意する方は多くないかもしれないが)。

 

一方で、「どうやったら思考力を高めることができるのか」という問いに対する答えを、自分なりに持てている人は少ないのではないか。

思考力というものは、人間の脳で行われている相当ブラックボックスな能力であるため、「〇〇をすれば、△△ができるようになる」といった形で鍛える方法を単純化することが難しいので、なかなか答えを出すのは難しい。

 

そんな中、現時点での僕なりの仮説は、「直接経験を通じた学び」と「他者が『経験から学んだ』際の思考プロセスを追うこと(間接経験)を通じた学び」の双方によって思考力を高めていけるのではないか、というものだ。

直接経験を通じた学び

これは特にヒネリもなく、ただ単に自分の目の前にある機会や仕事から学ぶことを指していて、ビジネス文脈で言うと所謂On the Job (OJT)トレーニングのことである。

やはり直接経験から得られるものは大きく、知っていたつもりでも経験してみたら更に多くの学びが得られるということはよくある。

 

世の中には経験しないと分からない、身につかない類のものがごまんとある、ということは色々な人が指摘しており、僕も個人的にその意見には賛成だ。

直接経験を通じた学びは、大きく思考力を向上させる。

 

一方で、直接経験を通じた学びには、その性質ゆえの限界性がある。

 

まず、1人が人生で経験できることは量的な限界があること。森羅万象、あらゆることを直接的に経験することなど、どんなに長生きであっても、お金持ちであっても無理である。

 

また、経験は意外と自由に選択できない。簡単な例としては、1000年前の中世ヨーロッパで起きていたことを直接体験したいと思っても、現代の科学技術では実現不可能である。現在に限っても、オリンピックの舞台を経験することは、ごく限られた人にしかできないことであり、行動力や資金力だけでは全てを叶えることはできない。

 

加えて、直接経験というものは自分の視点からしか学びを得られない。他者が1つの経験に関してどのように感じ、何を学んだかを取り入れる機会を持ちにくいということだ。

 

こういった限界性があるので、直接経験の価値は大いに認めつつも、僕は思考力を高めるためには「直接経験を超える」必要があり、もう1つの学び方を組み合わせることが重要だと考えている。

他者が『経験から学んだ』際の思考プロセスを追うこと(間接経験)を通じた学び

これはつまり、直接経験には限界性があるので、他者が経験した際にどのような学びを得たり、どのような形で思考力を発揮したのかを追っていくことで、直接経験の限界性を超越する必要がある、ということだ。

具体的な方法は、何でも構わないと思う。

人から話を聞いてもいいし、教えを請うてもいいし、書かれたものを読んでも良いだろう。

 

ただ、僕は個人的に「読書」を強くおすすめしたい。

僕自身が本好きということもあるのだが、これまで自分の思考力を鍛える上で最も役に立ったのだ読書だと思うし、僕が高い思考力を持っていると感じる人は、ほぼ例外なく習慣的に読書をしているからだ。

 

読書がなぜ思考力向上に役立つかというと、「①思考力とは何か」で説明したA~Cの要素を高めるための要素が多く含まれているからである。

時代を超えて、これまで人類で最も賢かったり、成果を出してきたりした人達が、世界をどのように理解し(要素A)、どのように解釈し(要素B)、どう対応してきたのか(要素C)を余すことなく吸収することができる。

 

そして、とても安価である。多くの本は、高くても精々数千円程度だ。

思考力向上へと繋がる「効果」と、それに必要な「コスト」を考えると、読書ほどコストパフォーマンスの高い活動はないのではないかと僕は思う。

 

ついでに言うと、本というメディアに蓄積された学びを享受するためには、ビジネスパーソンであってもビジネス書だけを読むのは大きな機会損失で、古今東西、ジャンルを問わず読んでみることをオススメしたい。

ビジネス書は、現代人のうちビジネスを主要活動としている人という限られた集合から、非常に多くの本が出版されているものなので、本というメディアが持っている資産のうち極々一部しかカバーしていないものだからだ。

2つの学びを組みあわせて、良いサイクルを生み出す

直接経験を通じた学びと、間接経験を通じた学びの双方を組み合わせると、思考力を強化していく上で良いサイクルを作り出すことができる。

 

例えば読書という間接経験を通じて、他者の思考プロセスをうまく自分の中に取り込み、その上で直接経験に立ち返ってみると、それまでよりも多くの学びを直接経験から引き出すことができるようになる。

 

そして直接経験から多くの学びを引き出せるようになると、関連する間接経験(本など)に触れてさらに視座を高めたりアンテナを広げたりしてみようという気になり、それによってまた直接経験から引き出せる学びが多くなったり深くなっていったりする、というわけだ。

ウルトラCを求めない

僕自身も色々と試行錯誤しながら自分の生存戦略を考えてきたが、やはりこういった地道ですぐには効果が見えにくい取り組みや工夫の積み重ねが、将来的に大きな差に繋がると強く感じている。

世の中にウルトラCはなく、一見ウルトラCで成功したように見える人であっても、裏では長期に亘る地道な努力を重ねてきているのだ。

 

自分なりに悩みながら思考力を少しずつ鍛えていくことこそが、遠回りに見えて実は一番確実かつ最短の道であることを頭に刻みながら、日々仕事と読書に勤しむ僕だが、これを読んだ方はどのような意見をお持ちだろうか。