西洋哲学史上の重要人物の思想を紹介しながらも、「哲学的な考え方」も同時に伝えるという、2つのことを高次元で両立している良書。
一般的に上記の2つを両立させることは難しい。
西洋哲学史を網羅的に記述し、紹介している本は多く存在する。しかし「歴史を記述する」という特性上、読者がその本を読んでも哲学的に考えること、言わば「哲学すること」にはつながりにくい。
哲学は他の学問と異なり、史実を含めた知識や情報を積み上げることが習熟にあまり結びつかないからだ。
そのため、「哲学を学ぶためには、哲学書そのものにあたるべきだ」ということがよく言われる。知識の積み上げではなく、「哲学している」著者の本を読んで、哲学的に考えること自体を体験すべきということだ。
僕もこれは正しい指摘だと考えている。
一方で、(僕もいまだにそうなのだが)哲学書は読んでも理解できない部分が多い。それなりに本を読む人であっても哲学書を他の本と同じようにスラスラと読める人はあまりいないはずだ。理解の足がかりを作るためには、周辺書にあたる必要が出てくる。そのうちの1つが哲学史を記述している本である。
哲学史の本は、哲学書ではない。ただ、各時代でどのような思想が流行っていて、誰がどのようなポジションにあったのかを知ることは、哲学書の理解に繋がる。
哲学を学びたいと思う人、少なくとも僕のようなアマチュアは、「哲学書にあたっては跳ね返され、周辺書にあたって理解のとっかかりを作り、また哲学書に挑む」という往復を繰り返しているのではないか。
しかし本書は一挙両得で、哲学史を学びながら「哲学する」感覚を得ることもできる。しかも価格は1,000円。読んで損はなく、お金のなかった学生時代の自分にもおすすめしたい良書である。