「我思う、故に我あり」というキーフレーズで有名な書。元々は大著だったが、現在「方法序説」として知られている文書はその序文とのことで意外と分量は少なく、また哲学書にありがちな形式ばった文体ではないため案外読みやすい。
内容はというと、唯一神を前提とした論理展開が含まれており、現代日本に住む僕らにはしっくりこない部分もある。知識を得る目的で読んでも得られるものは少ない。
本書を通じてデカルトから学ぶべきは、その知的態度だ。一般的に確実とされているものを信じず、必ず自分の頭(理性)をもって考え、判断していくという態度、そしてわからないものや疑わしきものを正直に「わからない」「疑わしい」と言い切る態度だ。知的誠実性と言ってもよい。
僕が新入社員の時、当たり前のことながらわからないことだらけだったので、上司から聞かれたことでわからないことがあればはっきりと「わかりません」と答えていたのだが、「わからないことをそんなに自信満々に答えるな」と怒られたことがある。
今思い返すと、これは半分正しくて、半分間違っていると思う。
わからないなりに、「今すぐにはわからないのですが、おそらくこうだと思います」と答えようとする姿勢は大事だ。その意味でこの上司の指摘は正しい。仕事において求められるのは、厳密な知識ではなく、常に「仮説」である。
一方で、わからないことをわかったふりをすることは間違っている。わからないことを認識すること - 成長のPDCAを回す起点はその気づきにあるからだ。
自分が「何をわかっていて、何をわかっていないのか」をメタ認知できなければ、自分の成長余地を理解することはできない。
わかっていると思っていたこと、確実だと考えていたことが、自分の頭でもう一度考え直してみると実は疑わしいのではないか。
そういった健全な知的態度を、400年前に書かれた本書で学んでみるのはおすすめである。