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学びの集積

0016冊:読書の腕前(岡崎武志著、光文社知恵の森文庫)

読書の腕前 岡崎武志(著/文) - 光文社

一言でいえば、読書好きが読書好きのために書いた本。読書が好きな方であれば必ず楽しめる、面白い本。僕も著者ほどの本読みではないが、とにかく読書という体験は好きなので、非常に楽しめる内容だった。一つ一つの文章から、本の楽しさや読書活動の素晴らしさが伝わってくる。

僕はこういった「本のための本」とでも言うべきジャンルは大好きなのだが、その理由を考えると、おそらく他者の読書活動の一端を垣間見ることができるからなのだと思う。

読書とは非常に個人的な活動だ。そこにあるのは本と読み手のみである。自身の読書活動が他者に伝えられることは基本的にはないし、その逆も発生しない。

ところが、「本のための本」は他者がどのように本に向き合い、読書活動に勤しんでいるかを教えてくれる。通常他と比較されることがない自身の読書活動が客観視される機会を提供し、相対化が起きる。まるで、母国語しか知らなかった人が初めて外国語を知ったような感覚だ。相対化されることで、自身の読書活動の特殊性や他者との共通性に気付き、その後の読書活動に深みが出てくる。

こんなことを教えてくれるからこそ、僕は「本のための本」を好んで読むのだ。ガイドブックや書評では得られない。「本のための本」だからこそ与えてくれる感覚である。何か情報を効率的に伝えるのではなく、本読みにとって重要な感性を伝えることが目的の本でなければなし得ないことなのだ。

少しでも読書が好きな人であれば、本書のような「本のための本」をぜひ他にとってみることをお勧めする。