作家や翻訳家、研究者など、31の書斎に著者が訪問し、インタビューとイラストでその内実を描いている本。16冊目で紹介した「読書の腕前」から派生して手に取った。
31の書斎の中には図書館や本屋なども出てくるので、あくまで個人の書斎に限ったことではあるが、皆が皆とにかく本に囲まれて暮らしている。そのうちの少なからぬ人から「本が勝手に増えていくので、泣く泣く処分したり、本を置くための部屋を借りたりしてなんとかやりくりしている」という話が聞けたり、各スタイルに合った整理方法を紹介していたりと、「本の沼」にハマっている人なら共感と学びが満載だ。(僕も共感しながら読んだが、およそ読書量において、この本に出てくる人たちとは肩を並べることができるはずもなく、本のための部屋を借りるほどの覚悟は持てていないので、あくまで気持ちだけの話である。)
16冊目と同様、こちらも「本のための本」であり、本来は個人的な活動である読書という営みについて、他者の考えを知ることのできる貴重な内容なのだが、尊敬すべき読書家達の考えを覗いてもなお自分の中で決着がつかない論点がある。それは「本は手元に置いておくべきか、手放すべきか」という問題だ。
本の保管や分類、情報整理に工夫を凝らしているという点ではどの読書家も共通しているのだが、「本は基本的に手元に置いておく」というスタンスと「本は必要な時に用い、仕事や研究が終わったら手放す」というスタンスに大別されるように思われ、それぞれのスタンスでは重視しているポイントがかなり異なるのではないかと感じられる。
「本は基本的に手元に置いておく」というスタンスの人は、目に触れる場所に本があることで自分の頭に浮かんでくるアイデアやひらめきを重視しているのではないか。いわばアウトサイドインのスタンスである。もちろん、仕事や研究の目的に沿って本を読んでいくこともしっかり行った上で、であろうが、更に+αを求めていく考えがその裏にはあると感じられる。
一方で「本は必要な時に用い、仕事や研究が終わったら手放す」スタンスの人は、合目的的にテーマに向き合っていくことを重視していると考えられる。本書に出てくる方で極端なケースでは、本棚には基本的にその時に取り組んでいる仕事のテーマに関連する本だけが入っているというものもあった。期間集中型で特定のテーマにガッと入り込んでいく姿が思い浮かぶ。
僕自身はというと、前段でもお伝えした通り2つのタイプをウロウロしている感じだ。これまではスペースの問題で泣く泣く数百冊単位で売り払うことが多く、結果として今の蔵書はそれほど多くない(本棚からははみ出しているが…)。金銭的に豊かになったら小型図書館のような書斎を作ってみたい気もするので、本質的には前者のスタンスなのかもしれない。
こんなことを考えたりしてみながら、本好きな方の娯楽として楽しく読み進めるのがおすすめだ。