ヘッジファンドBridgewater Associatesの創業者であるRay Dalioの著書。英文で500ページ以上ある大著だ。
ヘッジファンドの帝王という異名を持つDalio氏だが、僕らが「ヘッジファンド」という言葉を聞いて思い浮かべるものとは全く異質な考え方をベースとしてBridgewaterを経営していることで有名だ。彼は非常に時間軸を長くとり、大局的に歴史を捉え、人文学的なアプローチも踏まえながら歴史のうねりを分析し、その結果をアルゴリズムに落とし込んで資金を運用する方法をとっており、本書ではDalio氏が専門家と対話を重ねながら長年かけて獲得してきた歴史に対する独自の見方を惜しむことなく披露している。
Dalio氏の著書は日本語にも翻訳された”Principles”が有名だが、本書でも様々な情報を踏まえたうえで重要な原理原則にまとめあげる彼の類まれなる能力が大いに発揮されている。数百年という長い時間で歴史が織りなす複雑な社会・経済の動きを、驚くほどシンプルな原則で1つに束ね、10を少し超える程度の軸を設定して分析の手立てを用意する。世界の歴史に関する知識や洞察はもちろんだが、それらを資金運用という実践の場で価値発揮ができるレベルにまで落とし込み、誰にでもわかるシンプルな原理原則にまとめあげることは、おそらくRay Dalio氏以外にはできないことだろう。
現代の優れた戦略家が世界と歴史をどのように見ていて、それをどのように実践に生かしているのか。その一端でも見てみたいと思う方にはぜひ手に取っていただきたい一冊だ。ちなみに英語はとても平易で、論旨も明確なので洋書としてはかなり読みやすい部類なので、その点でもおすすめできる。