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学びの集積

0038冊:MBAバリュエーション(森生明著、日経BP実践MBA)

日経BP実戦MBA 2 MBAバリュエーション

実務でバリュエーションに関わったので、知識の欠損がないか簡単に振り返るために再読。初版は2001年と20年以上前だが、廃れるような内容ではないことに加え、読み手を腹落ちさせるために実務家の視点に徹して記述している本書は、今でもバリュエーション関連の本では上位に名前が挙がる名著だ。

今ではバリュエーションに関する本は多く出ており、より専門的な内容を網羅しているものや、ケーススタディにフォーカスしているものなど、良い本が増えている。そんな中で本書は、「骨太のロジック」で攻めるタイプである。専門家が本を書こうとするとついつい気になってしまう正確性や網羅性といった点に過度に入り込まず、あくまで「実務家が現場でバリュエーションする際に役立つ考え方」に絞って説明しきっている点が、今でも多くのビジネスパーソンに読まれている理由だと思う。

本書のように、「入門書でありながら、ある程度詳しい人が読んでもなるほどと思うような本質を突いた本」というのは貴重であり、本当に素晴らしい本だと僕は考えている。こういった本を書くためには、センスだけでなく、とんでもない工夫と労力が著者に求められるのだ。本書の素晴らしさ故に、僕は今でも、バリュエーション初心者には本書を勧めることにしている(専門家ぶってマッキンゼーの”Valuation”を紹介したいという見栄を抑えながら。あちらはもっと玄人向きである)。