タイトル通り、経済学の三大巨人にフォーカスを当てた本。経済学が、現実の経済から離れて過度な理論追求を進める風潮にあると強く批判した上で、各時代の経済的な課題に対し最適解を出そうとたスミス・マルクス・ケインズを振り返ることの重要性を著者は指摘している。
理論化や、数学的なアプローチを取り入れて経済学を発展させていくこと自体は重要ではあるが、「より良い社会/経済を実現していくためにはどうすべきか?」という問いを中心に据えることが重要であること、すなわち目的と手段を倒錯すべきではない、という考えがこの本においては貫かれているが、これは何も経済学だけに限った話ではなく、あらゆる取り組みに言えることだ。
自分自身の活動を振り返っても、目的を達成するための手段だったことが、いつの間にか目的そのものにすり替わってしまっている、ということはよくあるが、そんな時に当事者である自分ではなかなか気づかないことが多い。他者の何気ない指摘から、ようやく気づくことができることができることが殆どである。
こちらの本も、著者は経済学者ではなく、あくまで経済現象を観察するジャーナリストとして、あえて「外野」の目線で考える、ということにより、目的と手段が倒錯しているのではないか、ということを浮き彫りにしようとしており、だからこそ根源的な問いに迫ることができているのではないだろうか。
彼ら(スミス・マルクス・ケインズ)の著作は重要ではあるものの、それぞれがそれなりに難しい内容であり、著作が書かれた時代背景や当時の経済状況等が掴めていないとなかなか一人で読み切ることは難しい。本書は、スミス・マルクス・ケインズの生涯を簡単になぞりながら、主要な著作がどのような文脈や課題意識から生まれてきたのか、ということをわかりやすく記述しており、私のような素人としては非常に取っ付きやすい内容だ。
経済学を深く学ぶとまではいかなくとも、経済学の偉人たちが何を考え、どういった点で歴史に名を残しているのかを理解したいと考えている人には、間違いなくお勧めできる本だ。