地政学の観点から国際関係の将来を見通す、ストラテジストとして世界的に著名なジョージ・フリードマンによる一般向けの著作。出版は2014年と、この手の本としてはかなり時間が経ってしまっているが、まだまだ価値を失わないのは流石は「影のCIA」である。
100年「予測」というタイトルだが、「正確に未来の出来事が予測されているか」という視点で本書を読むと、面白さと学びが半減する。著者も本書の中で、描写している予測は、特に詳細部分については外れる部分があるだろうと話しており、正確な予測で価値発揮をしようとは考えていない。
本書の真髄は、著者が示す思考のアプローチだ。著者の分析に通底する考え方は、①まず「ある国が抱える、地理や資源、国際関係といった観点における所与の制約」を同定する、②制約を踏まえて、「当該国が合理的に考えて導き出す行動のオプション」を考える、③有力なオプションを選択した際に、アメリカや周辺国がどのような反応を示すかを描く、というものである。非常にシンプルだが、各国の歴史や特性を踏まえたその分析はユニークながら説得力があり、確かに予測自体は外れるかもしれないが、分析のロジックを学ぶことで国家間の応酬が前よりも見えてくるようになる。
知識や情報は陳腐化する。しかし、情報を踏まえて示唆を導き出すための頭の使い方は、非常に汎用性が高く、長く使える武器となる。本書は、そんな耐用年数の長い武器を身に付ける一歩となる本であり、お勧めできる。