東京大学教養学部が新入生に向けて編纂したブックガイド。
東京大学で教鞭をとる教授陣が各パートで新入生に読むべき本を紹介していくというコテコテのブックガイドであり、かなりハードルが高そうに見える。事実、有名どころから本格派まで、あらゆるジャンルの本が縦横無尽に紹介されており、決して「ユルイ」内容ではない。
一方で、まったく押しつけがましさを感じさせる本でもない。「教養のためのブックガイド」というタイトルで、しかも東京大学出版の本となると、僕のような非アカデミックに本を読んでいるアマチュア読者からすると、「教養とはこうあるべき」と押し付けられているような内容を想像してしまうが、本書はそういったスタンスで書かれた本ではないのである。
第1部の「いま,教養とは?」で示されている本書のスタンスとは、全員が全員、「教養をつけるためにこの本を読むべき」という教養リストは存在せず、1人1人が自身の知的探求のために必要な本を見つけ、読み、自分なりのリストを洗い替えし続けるべきというものだ。僕は「この本くらい常識として読んでおくべき」という紹介のされ方が個人的に非常に苦手であり、そんな紹介のされ方をするとむしろ読む気がなくなるくらいなので、そういったスタンスが垣間見える一部のブックガイドは敬遠しているのだが、本書はとても僕好みのスタンスである。
個々人によって異なるリストが必要となるのだとすれば、ブックガイドなど必要ないのではと思いがちだが、そんな中でも奥深い知の世界を紹介する位置づけで、ブックガイドをつくることはできるのではないか、というのが本書の前提としている考え方であり、だからこそ「突き放すわけではないが、押しつけがましくない」というとてもバランスの取れたブックガイドとなっている。東京大学に入学してくる生徒のことを考えて、相当時間をかけて考えて構成した本だと想像される。
何か新しいものを学びたいと考えている方、いつものちょっと違う本を読んでみたいと思っている方にはうってつけのブックガイドだ。