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学びの集積

0050冊:CEO Excellence: The Six Mindsets That Distinguish the Best Leaders from the Rest(Carolyn Dewar / Scott Keller / Vikram Malhotra著、Nicholas Brealey Publishing)

[Carolyn Dewar, Scott Keller, Vikram Malhotra]のCEO Excellence: The Six Mindsets That Distinguish the Best Leaders from the Rest (English Edition)

マッキンゼーのシニアパートナー3名による共著。優れたCEOを200名抽出し、そのうちの数十名に直接インタビューして、優れたCEOの取り組んでいる仕事は何か、そしてそれらの仕事にどんな考えを持って取り組んでいるのかを明らかにした本。

既にCEOとして日々奮闘している人にとっては当然大きな示唆をもたらす本だと思うが、それ以外にも、将来的には企業経営を自分でしてみたいと考えている人や、普段CEOと関わりのある仕事をしている人にも、読む価値がある本だ。僕が考える、本書の素晴らしい点は大別して3つある。

 

1つ目は、CEOの役割を過不足なく、かつ明確に示している点である。本書では、大きく分けて6つの役割、そして各役割について更に詳細のポイントが示されているが、6つある全ての役割が本質的、かつ全てが揃って初めてCEOと言えるような要素が抽出されていることが素晴らしいところだ。

特定の機能ではなく、企業経営そのものを司るCEOというポジションは、その役割を画一的な視点でカッチリと定義することは難しい。言ってしまえば、「より良い会社にする」ために必要なことを全て考え、実行に移すのがCEOの役割であり、そのために必要な要素は状況に応じてどんどん移り変わっていくし、正解がなく独自性の出る領域なので、人によっても考え方が大きく異なる。だからこそ、CEOというポジションに普遍的に求められる要素を、過不足なく抽出するのは非常にハードルが高い。そのハードルを本書は超えることができている。

2つ目は、優れたCEOの具体的な発言や考えを、上記の要素に紐づけて示している点である。インタビューで得られた具体的な発言が、CEOの6つの本質的な役割のサポート材料として出てくることで納得感が増し、「役に立たない抽象論」となることを防いでいることに加え、しっかりと各役割のコンテキストに位置づけられることで、CEOの発言が「経営者の名言」「偉い人のありがたい言葉」として貶められることなく、非常に実践的なコメントとして浮かび上がってくる。

直接インタビューすることで得た数十名ものCEOの考えを抽象化し、本質的な要素へと昇華させ、また具体的なインタビュー内容に戻り、抽象論を精緻化していく、ということを間断なく繰り返しただろうと想像され、その結果として抽象論と具体論がぴったりと整合し、説得力の高い内容に繋がっている。

3つ目は、CEOはどんなに優秀でも1人の人間であり、必ず限界点があるということを忘れずに本書が書かれている点だ。普通に働いていると、(規模の大きな企業であれば特に)CEOとは距離を感じてしまい、どうしても生身の人間というよりも「CEO」という抽象化された存在として捉えてしまいがちだ。抽象化された存在として捉えてしまうと、「どんな大変なことがあっても、常人には理解できない方法で何とかしてしまうスーパーな人」と考えてしまい、CEOへの理解が遠のく。

CEOになるような人は、もちろんとんでもなく優秀で、常人では及びもつかないほどパフォーマンスが高いわけなのだが、とはいっても時間は有限であり、理解できないこともあるし、不得意なこともある。そういった人間としての有限性を抱えたうえで、会社を良くするために経営し続けているところに凄さがあるのであり、そのリアリティを忘れてはならないと僕は考えている。

その点、本書はそういったリアリティをしっかり抑えたうえで書かれている。特に後半の”Chapter 16 : Time and Energy Practice”では、人間としての有限性を踏まえたCEO個人の仕事の捉え方について多く触れられており、示唆に富む内容だ。

 

CEOの仕事を真正面から捉えた本は少ない。優れたCEOにフォーカスして書かれている本は更に少ない。優れたCEOの本質を捉えようという本書は、本質を押さえているが故に時間が経っても古くなりにくい内容を提示しており、今後も長く読まれる本となるだろう。最近、日本語で翻訳も出ているので手軽に読むことができる。