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学びの集積

0056冊: シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント(著:エリック・ジョーゲンソン、訳:櫻井祐子、サンマーク出版)

シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント エリック・ジョーゲンソン(著/文) - サンマーク出版

シリコンバレー最重要思想家(シリコンバレー思想家なるジャンルがあるのを知らなかった)と言われるナヴァル・ラヴィカント氏が、SNSやブログ、メディア等を通じて発信した内容をまとめた本。

シリコンバレー云々というタイトルなので、「起業しろ」的なゴリゴリのビジネスマッチョ本かと想像していたが、「1日1時間読書をしよう」「原典・古典を読もう」などという意外と自分好みの格言が出てきたりする内容で、この手のタイトルのビジネス本には珍しく、抵抗感なく読めた。

 

読書の素晴らしさとスーパーパワーを明言してくれている時点で、読書を仕事と人生の中心に置いている自分としては満点なのだが、本書のコアは別のところにある。「あらゆるコンテンツが限界費用(ほぼ)ゼロで複製可能となった現代において、どのような方法が勝ち筋となるのか」という問いに答えるのが、本書の主題である。

上記の問いへは、簡単にまとめると以下のロジックで回答されている。キーワードは、「特殊知識」「レバレッジ」「説明責任(事業リスクの引き受け)」であり、この3つは密接に関連している。

  • 自分の純粋な興味と情熱に従って、なんでもよいから100%のめり込めることを見つける
  • のめり込んでいると、「特殊知識」が身につく。「特殊知識」とは、非常に属人性の高い、なかなか真似されない知見やスキルのこと。多くの場合、専門性や創造性が高く、外注や自動化が難しい(昨今話題のAIにも代替されにくい)
  • 「特殊知識」は真似されにくいが、自分で「レバレッジ」をかけることはできる。「レバレッジ」は、「コードとメディアを活用し、限界費用(ほぼ)ゼロで複製する」ことで実現できる。
  • 「レバレッジ」をかけるためには、「説明責任」を引き受ける必要がある。「説明責任」を引き受けるとはどういうことかというと、エクイティを取り、事業リスクを引き受けるということ。「説明責任」を引き受けないと、時間を切り売りしてお金を得ることになる。「説明責任」を引き受ければ、投下時間とアウトプットが連動しないので、「レバレッジ」を効かせられるようになる。
  • 100%物事に取り組むと、他人と僅かであっても差が生まれる。レバレッジにより、この差を積み上げて、増幅していくことができる(つまり、複利効果を得ることができる)。僅かな差が、将来埋められない差を作り出す。だからこそ、起点で僅かな差を生み出せる領域を選択することが重要で、それは自分の興味・関心が集中する領域である。「自分らしさで勝負する」とはそういうこと。

 

とても地に足の着いたロジックだが、個別性が高すぎて汎用性が低いこともなく、誰もが自分の好みや強みを生かして将来を描いていける内容だ。

あらゆるコンテンツが限界費用ゼロで複製可能な世界というと、僕などはついつい自分の生み出すアウトプットがディスラプトされてしまう印象を持ってしまう。だが、「ほんの僅かな差」を生み出せる領域をピンポイントであっても見つけることができれば、逆に限界費用ゼロで複製可能な状況を利用しまくることができる。